和尚のひとりごとNo1107「法然上人一代記 36」

36.東大寺での講説

さて大仏殿の再建工事は重源の尽力が功を奏し、着々と進められておりました。そのような中再建半ばの東大寺において行われたのが、法然上人による「浄土(じょうど)三部(さんぶ)経(きょう)」の講義であります。
重源は法然上人を招いて、南都の衆に対しても法然上人の勧められた念仏の教えの優れている事を示したいとの思惑があったのでありましょう。
正面には観(かん)経(ぎょう)曼陀羅(まんだら)を掲げ、宋渡来の浄土五祖図を祀り、南都の衆二百人もの僧たちが法然上人の講義を聴聞しました。あわよくば教えの至らぬ点を罵り、破斥してやろう、そのような心で話を聴く者も多くいたでしょう。
法然上人は浄土三部経の有難さをとくとくと説き、口で称える念仏こそが救いの眼目であると話しました。それを聴いた参列者や僧たちは、かえってその教えの素晴らしさに心打たれ、何より上人の話に一貫した論旨を読みとり感心したと伝えられます。
ある一老僧は「私はすでに齢八十歳であるが、この年まで生きてきた斐あった」と喜び勇んで念仏を称えたということです。

大仏殿で「観経曼荼羅」「浄土五祖影」を供養される法然上人(知恩院蔵『法然上人絵伝』より)