和尚のひとりごとNo1106「法然上人一代記 35」

35.鏡の奇跡

法然上人との面会で心落ち着いた重衡は一つの発願を致しました。
「大仏殿再建の為に私も何か寄進したい」
しかしながら落ちぶれた現在の身では財産をはじめ何一つ寄進できそうなものはありませんでした。重衡は手持ちの鏡を寄進することにいたします。
大勧進の重源はそれを有難く受け取り、仏を鋳造する爐(ろ)に投げ込みました。するとどうでしょう。鏡はたちまちのうちに火中より飛び出して遠くに散りました。
それを見た衆はたいそう不思議であるとその鏡を大仏殿の正面にかけ、今は亡き重衡を偲んだと伝えられます。
重衡は法然上人との面会後、その潔さから鎌倉にては源頼朝の優遇を受けましたが、焼き討ちにあった宗徒の要求により木津川で斬首されたとの事です。

衡供養塔がある般若寺