和尚のひとりごとNo1096「法然上人一代記 25」

25.範宴比叡の山を下る

ここで一人の一途な青年層のお話をいたします。吉水の庵にて日々念仏を申していた法然上人をある日訪ねた僧が降りました。
その名を範宴(はんねん)、比叡山にて勉学を重ねましたが、既に当時の比叡山は有力者の子弟が寺の上層部を占め、あたかも世俗社会の様相を呈しておりました。また南都の勢力と競合し、多数の僧兵が政争に明け暮れている状況では、後世(ごせ)の救いを真摯に求めて求道する青年層には耐えられぬ環境であったことでしょう。なおかつ範宴は自身の内面に沸き起こる貪欲(とんよく)を抑えることままならず煩悶(はんもん)の日々を送っていました。
お山を下ることを決心した範宴は京都は六角堂(ろっかくどう)に参籠(さんろう)、百日の満行を誓いました。

範宴の出家