和尚のひとりごとNo1085「法然上人一代記 15」

15.善導大師の教え
善導大師は唐の時代の初め(613~681年)、有名な玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)が17年に及んだインド遊学より帰朝した同じ時代に活躍された方です。当時は学問中心の仏教ばかりであった中国でも、徐々に実践への機運が高まっていました。善導大師は浄土の教えに関して数多くの書物を残されましたが、特に仏の本願に誓われた念仏の実践とそれによる往生を強く説かれました。
さて法然上人のお心を強くとらえたのは『観経疏(かんぎょうしょ)』散善義(さんぜんぎ)の中の次の一節であります。
「一心に専(もっぱ)ら弥陀(みだ)の名号(みょうごう)を念じて行住坐臥(ぎょうじゅうざが)に、時節(じせつ)の久近(くごん)を問わず。念々(ねんねん)に捨てざる者、これを正定(しょうじょう)の業(ごう)と名づく。かの仏の願に順(じゅん)ずるが故に」
ただひたすらに阿弥陀如来の御名(みな)を念じ、それを常に忘れぬように心がけること。これこそが正しく定まった業である。何故なら仏の誓いに準ずる行いであるから。
この一文に出会い法然上人は感激のあまり滂沱(ぼうだ)のごとく涙にくれたと伝えられます。