和尚のひとりごと№2224「浄土宗月訓カレンダー1月の言葉」
和尚のひとりごと№2224「良い目標はこの一年を輝かす」
三浦綾子(1922~1999)さんの小説『続・氷点』に、「一生を終えてのちに残るのは、われわれが集めたものではなくて、われわれが与えたものである」という言葉が出てきます。個人の趣味から財産に至まで、私利私欲のままにかき集めたものというのは、一個人が亡くなってしまえば単なるガラクタになってしまいます。集団のものであっても奪い集めたものとなれば、一集団が滅びれば別の集団に奪われてしまいます。財産といえども、個々の強欲に執われてしまうと争いの元になるだけなのです。それに対して、世の為、人の為、社会の為に分け与えたものは一個人が亡くなっても正しく伝え残されていくものになります。集団で言えば正しい社会を築き上げる礎(いしずえ)となります。特に、目に見えないもの、手で触れることの出来ないものは伝え残されていきます。優しい言葉遣いから、正しい教育、人生の教訓や教えなどです。一個人が生きた証として確実に残り続けるものとなります。
「人生会議」(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)という厚生労働省が提案した、生きていく上での指針があります。もしもの時の為に、自分自身が望む医療やケアについて前もって考え、家族や医療ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取り組みのことです。「人生会議」という名称は、とある病院の看護師さんが名付けた言葉です。命名の理由は、常日頃から医療従事者として大切なのは、「患者さんが満足いく医療や最期を迎えられるかどうか」だと考え、集中治療室での勤務を通して、「患者さんともっと終末期における希望を話しておけたら」と思い、ACPについて、「患者さんが医療従事者とだけでなく、家族会議や食卓の場など、身近な場面でも話し合えるくらい浸透して欲しい」という強い思いで、「人生会議」という愛称を付けられたそうです。元気なうちから、もしもの時の為に、自分自身の意思を、家族や友人、医療従事者に提示しておくことが大切です。
もしもの時の為に自分自身の生き方を見つめ直すことは大切なことです。自分の人生ですから、最期の迎え方が納得のいくカタチとなるよう、元気なうちにしっかりと意思表示しておくことです。しかしこの世での自分の命は限られています。元気なうちに伝え残していくものは何か。我欲のままに手元に「集めたもの」などは、自らの死とともに消えて無くなり、いずれ捨て去られていくものです。それに対して「与えたもの」はそうではないのです。優しい言葉から正しい教えこそが後世まで伝え遺されるものとなります。親兄弟から先生と呼ぶ人たちなどから受け取った有形無形の施しを、自らの肥やしにするだけではなく、次の世代に伝えていくこと。これこそが、この世に生を受けた意味となってまいります。
新年を迎え、個人的な目標をたてる事も大事です。それと同時に、世の為、人の為、社会の為になる良い行いを日々の志としていくことが、充実した一年となり、輝かしい人生となることでしょう。
