和尚のひとりごとNo1071「法然上人一代記 1」

和尚のひとりごとNo1071「法然上人一代記 1」

1.聖(ひじり)この地に生まれるの予言
時は平安時代、美作(みまさか)の国久米南条稲岡庄(くめなんじょういなおかしょう)に一人の旅の僧侶が訪れた事から物語は始まります。美作は、今は昔の吉備の国、現在では岡山県、広島県、そして兵庫県の三県にまたがる土地であり、その中でも比較的岡山県寄りの小さな村落でありました。
さてその旅の僧侶、村人が一見してそうと分かるように、まさに聖と呼ばれるにふさわしい品格を漂(ただよ)わせていたと伝えられます。
僧はこの地にある小高い山すそに辿り着くと、不意にそこで経文を唱えたかと思うと、手に携えていた金剛杖で地を示して言いました。
「今から五百年ののちの世に、まさにこの地にひとかたならぬ立派な僧侶が出現するであろう。この私の予言が正しければ、大地がそれを証明するだろう」
僧は大地に突いた金剛杖を引き抜きました。するとどうでしょう。そこから清らかな湧水がこんこんと湧き出たではありませんか。見守る村人の驚きようと言ったらありません。この不思議なお話は人々のあいだに語り継がれていきました。