和尚のひとりごとNo1093「法然上人一代記 22」

22.遊蓮房との邂逅が意味したこと

そのようにして遊蓮房が別所善峰に隠遁したのち、法然上人はその庵(いおり)を守りながら日々お念仏の生活を送りました。
さて法然上人にとり遊蓮房との出会いはどのような意味合いを持っていたのでしょうか。それは自内証(じないしょう)を得られたことであると言われています。
かつて仏教を説かれたお釈迦さまが、自らの覚りについて、自らが体験する事ではじめて本当の意味で証明されるとしたのとまったく同様に、比叡の山を下りられた法然上人が必要とされていたのがこの自内証でありました。
かつて報恩蔵にて熟読された浄土の御教えによれば確かに私たち凡夫は救われていく。しかしながらそれを実際に体現された遊蓮房との出会い、そしてともに念仏生活を送る中で実感されたであろうその念仏信仰の確かさこそが、法然上人に自内証の大きな力となりのちの活動を支え続けたのであります。