和尚のひとりごと№2342「浄土宗月訓カレンダー5月の言葉」

和尚のひとりごと№2342「まず一呼吸」

 

 

新緑の季節になり、青葉若葉が美しく感じます。しかし、新生活がスタートした4月から少しづつ緊張がほぐれてきて、心と体の疲れが出てくる時期でもあります。いつの頃からかこの時期の不調を、「五月病(ごがつびょう)」と呼ぶようになりました。やる気が出なかったり、不安やストレスを感じ、気分にムラが出たりします。そして睡眠不足から朝起きるのが辛くなり、体調を崩してしまう場合もあります。そんな時は無理せず、とにかく休むことが先決です。ウォーキングやストレッチなどの適度な運動をし、家族や友人に話を聞いてもらうことも大事です。
 一休禅師(1394〜1481)のアニメ『一休さん』(1975〜1982放送)で「あわてない、あわてない。ひと休み、ひと休み」とつい口ずさみたくなるフレーズを、一休さんが伝えていました。

有漏路(うろじ)より無漏路(むろじ)に帰る一休み 
雨降らば降れ 風吹かば吹け(一休宗純)

一休禅師と呼ばれるようになった短歌です。有漏路とは悩みの多い人間世界のことで、無漏路とは悩み苦しみの無い悟りの世界、仏の世界のことです。人生とはこの世からあの世へと向かうほんの一休みのようなもの。雨が降ろうが風が吹こうが「気にしない気にしない」という大らかな一休宗純らしい言葉です。一休さんからしたら人生というのは、一休みするほどの短さであり、心のこだわりを捨てて、深刻にならず、軽い気持ちで生きることを勧めておられるのだと思われます。
87歳まで生きられた一休禅師ですが、亡くなる直前に弟子たちに一通の手紙を託されました。その時に一休禅師は、「本当に困ったことになったら開けなさい」と言われたそうです。その数年後、弟子たちが手紙を開けると、そこに書かれていたのは、「心配するな、大丈夫。なんとかなる」でした。皆、お腹を抱えて笑ったそうです。困っている時に、「なんとかなる」と簡単に言われても、「人の気も知らないで」と腹が立つものです。しかし、一休禅師が深刻ぶらずに、「心配するな、大丈夫。なんとかなる」と言ってくれたと思うと少し心が軽くなったとも言い伝えられています。
 現代社会は、便利な世の中になった反面、時間に追われ、仕事に追われ、ストレスの多い社会とも言われます。一休禅師の伝えられた言葉のように、疲れた時には一休みをし、ゆったりとした時間を過ごすことも大事です。一呼吸してからまた為すべき仕事にとりかかりましょう。