和尚のひとりごと№2223「浄土宗月訓カレンダー11月の言葉」
和尚のひとりごと№2223「我行精進 忍終不悔」

我行(がぎょう)精進(しょうじん)忍終(にんじゅう)不悔(ふけ)は、『無量寿経(むりょうじゅきょう)』に説かれるお言葉です。
「我が行は精進して、忍びて終わり悔いなし」と読み下します。「たとえどの様な苦難にこの身が遭おうとも、悟りを求めて耐え忍び、修行に励んで最後は決して悔いることはない」と、阿弥陀様が仏となられる前、法蔵(ほうぞう)菩薩として修行していた時に誓われた言葉です。この言葉の前には、「仮令(けりょう)身止(しんし) 諸苦(しょく)毒中(どくちゅう)」と説かれます。「たとえこの身を苦しみに満ちた世界に沈めようとも」という意味です。
法蔵菩薩は全ての人々を救う為に、厳しいご修行をされていかれました。仏となる為には、どの様な困難、苦難に遭おうとも、たとえ苦しみに満ちた世界に我が身を沈めてでも人々を救うと誓われていかれたのです。非常に尊くありがたいお姿です。我々には到底真似出来るものではありません。しかし、全ての物事に対し努力し精進する御心を頂戴し、私たちも少しでも悔いの無い日暮らしを心がけ、努め励みたいものです。
昔、テレビで「カステラ一番、電話は二番、三時のおやつは文明堂」というコマーシャルが流れていました。カステラで有名な文明堂さんのコマーシャルです。その文明堂が本場長崎から大阪の町に店を出すことになりました。商人の町大阪で、初めから大きな店を構えることは出来ません。しかし、小さな店構えには不釣り合いの大きな金庫を店の奥の方へドンと据えられたそうです。浪花の商人たちはこの金庫を見て、「他所から出てきたもんが、こんな小さな店でそんな儲かるはずはない。あんな大きな金庫を据えて、そんなお金が入るわけはない」と口々に噂しました。確かに初めは小さな商いですから、皆が噂するようにそんな沢山の儲けは出ませんでした。しかし、僅かばかりのお金は儲けとして店に残ります。そのお金を、文明堂のご主人は毎晩、しっかりと鏝(こて)をかけて、きちんとシワを伸ばして、大きな金庫に納められたそうです。翌朝になると、このお金は羽が生えたように大阪の町へ出て行きます。ところが、その羽の生えたお金が仲間を連れて帰って来たと言うのです。「どうせ一晩休ませていただくのなら、手足伸ばしてゆっくり休める文明堂へ行きましょう」と言ったところでしょうか。お金が仲間を連れて戻ってきたのです。
文明堂さんの話は精進する姿の喩えです。真心込めて励む姿を表しています。目には見えなくとも、精一杯努力する心がけが、やがて実を結ぶのです。文明堂のご主人が毎晩お金に鏝をかけていたのは、お客さんを大事に思い、商売に精を出していた正に「我行精進」のお姿です。
仕事、商売に関わらず日々の生活においても日々努力し、出来るだけ悔いの残らないようにしていきたいものです。信心においては、南無阿弥陀佛とお念仏を怠らず申していくことが今を精一杯生き切る姿です。無理なく怠らずお念仏申して過ごして参りましょう。
