和尚のひとりごと№2191「鎌倉法語集」1

和尚のひとりごと№2191「鎌倉法語集」1

 

第一:三代の相伝

用意問答(よういもんどう)』云(い)わく、そもそも近来(きんらい)法(ほう)然(ねん)上(しょう)人(にん)この界(かい)に出(いで)て、念仏(ねんぶつ)勧(すす)めたまう事(こと)おわしき、これ大権(だいごん)垂迹(すいじゃく)なり。弟子(でし)良(りょう)忠(ちゅう)宿因(しゅくいん)有(あ)りてその流(なが)れをくめり。

(また)(い)わく、問(とう)ていわく、念仏(ねんぶつ)には三心(さんじん)具(ぐ)すべしとみえたり。然(しか)るに人々(ひとびと)義(ぎ)道(どう)まちまちにかわりたり。相伝(そうでん)口決(くけつ)義勢(ぎせい)以(もっ)往生(おうじょう)極楽(ごくらく)指南(しなん)備(そな)えんと思(おも)如何(いかん)

良忠上人(光明寺蔵)

【訳】

『用意問答』には次のように説かれています。さて、近頃は、法然上人がこの娑婆世界に出でて、念仏をお勧めになられたということがありました。これは勢至菩薩が法然上人のお姿でこの世に現れたものです。弟子である私、良忠は過去世からの巡り合わせでその流れを汲むことができました。

また『用意問答』には次のように説かれています。質問します。「念仏を称えるにあたり三心を具えるべきである」と説かれています。けれども、人々の三心についての理解や実践はまちまちに変化してしまいました。師から弟子へと直接、口頭で伝えられて来た受け取り方をもって往生極楽の指針として身につけていたいと思うのですが、いかがでしょうか。

 

用意問答(よういもんどう)

一巻。良忠述。正嘉二年(一二五八)九月二一日成立。浄土宗の行者が日常心得るべき点一七箇条を挙げ、二二の問答体によって解説する。そのため『十七箇条用意問答』ともいう。本書は良忠が下総在住時代に荒(あら)見(み)弥四郎(やしろう)という在俗の信者のために著したとされ、和文体によって書かれている。内容としては、一向称名の行者振舞の事・念仏三心の事・自力他力の事・口称の時数とる事・造罪念仏の事・造罪往生の事・俗人死去の時出家させる事などが示されている。(浄土宗大辞典)

 

※大本山光明寺さまより発行されている『鎌倉法語集 良忠上人のお言葉』より再掲引用させていただいた内容となります。