和尚のひとりごと№2128「浄土宗月訓カレンダー8月の言葉」

和尚のひとりごと№2128「仏縁を継ぐ夏休み」

 お盆にはご先祖様や、先立たれたお方の御霊が人間世界に戻ってきて私たちと共に過ごされます。迎え火を焚き、お盆のお供え物をしてご先祖様を我が家にお迎えいたします。送り盆の時には、送り火を焚いてお浄土に再び還っていただきます。これは盂蘭盆会(うらぼんえ)という、お釈迦様の説かれた御教えに基づく仏教行事です。
ドイツの宗教家、マルティン・ルター<1483~1546>は、「たとえ明日、世界が滅亡しようと知っても、今日私はリンゴの木を植える」という言葉を遺されました。
リンゴは実を付けるまでに数年かかる植物です。ですので、今日リンゴの木を植えたところで直ぐに収穫して口にする事は出来ません。明日世界が滅びるならば尚更無意味な事です。この言葉は、リンゴの実を収穫出来るかどうかという実益や損得を考えるものではありません。リンゴの木を植えるという生産的な行為を通して、人間の希望を説いているのです。自分がリンゴの実を食べる事が出来なくても、今出来る事を続け、明日や明後日、その先の未来に生き続ける人々に希望を託していくべき行為を示しています。そして今私たちが出来る事をしっかりとしていこうという事です。
お釈迦様は阿難(あなん)という弟子にお念仏の御教えを遺していかれました。お経の中では、「汝好持是語。持是語者、即是持無量寿仏名」『観無量寿経』と説かれています。
「汝、よくこの語をたもちなさい。この語をたもてとは、すなわち無量寿仏(阿弥陀仏)の名をたもちなさい」という意味です。お釈迦様は沢山の法を説かれましたが、最期は南無阿弥陀仏のお念仏を申していくように託されたのです。最終的にはお念仏こそが誰もが救われていく道であり、究極的にはお念仏しか残された教えはないという事です。
 現在、大阪夢洲で大阪・関西万博が開催中です。万博のコンセプトは、世界80億人がアイデアを交換しあい、未来社会を「共創」していくものです。人類共通の課題解決に向け、先端技術などの世界の英知を集め、新たなアイデアを創造し発信する場であります。それは、今の私たちが力を合わせ、より良い社会づくりを目指していき、未来の人々の為に希望を託していくのです。
 お盆の風習は目には見えない信仰の表れです。それは心の豊かさを育ませていただく行為であり、人として生きる上ではなくてはならない心の支えとなるものです。先人の方々が語り継がれてきた行いには、今をしっかりと生き切らせていただく叡智が備わっているのです。お盆を迎え、お念仏をお申し、西方極楽浄土に往かれた方々に想いを寄せて、私たち自身の信仰を深めてまいりましょう。