和尚のひとりごと№2206「鎌倉法語集」16
和尚のひとりごと№2206「鎌倉法語集」16

第四:回向発願心①
故(ゆえ)に『疏(しょ)』に云(い)わく、一心(いっしん)に専(もっぱ)ら弥陀(みだ)の名号(みょうごう)を念(ねん)じて、行住(ぎょうじゅう)坐臥(ざが)に時節(じせつ)の久(く)近(ごん)を問(と)わず、念々(ねんねん)に捨(す)てざる者(もの)、是(これ)を正定(しょうじょう)の業(ごう)と名く。かの仏(ほとけ)の願(がん)に順(じゅん)ずるが故(ゆえ)に、といえり。立(た)ち居(い)起(お)き臥(ふ)しにわすれず、念々(ねんねん)に念仏(ねんぶつ)申(もう)せといえり
【訳】
故に善導大師の『観経疏』には次のように説かれています。「心を込めてただひたすらに南無阿弥陀仏と阿弥陀仏の御名を称え、行住坐臥のどんな状態でも、称、える時間も気にすることなく、怠らずに継続する、これをまさに阿弥陀仏が選択し、凡夫の極楽往生が決定する「正定業」と名づけるのである。なぜなら阿弥陀仏がすべての生きとし生けるものを救おうと誓われた本願に順じているからである。立ったり座ったり横になつたりするときに念仏を称えることを忘れず、一念一念怠らずに念仏を称えなさい」と善導大師は仰っています。
『疏(しょ)』
『観経疏』、『観無量寿経疏』四巻。唐善導大師。従来は主に禅観実践の経典と捉えられていた同経を、阿弥陀仏による救済に主眼を置いた経典として捉え直し、阿弥陀仏による本願と凡夫救済(報土往生説)が明確に説かれている点に大きな特色がある。
行住(ぎょうじゅう)坐臥(ざが)
僧尼の守るべき四種の立ち居ふるまい(動作)である四(し)威儀(いぎ)のこと。『菩薩善戒経』に説かれる。
正定(しょうじょう)の業(ごう)
正定業、極楽往生が正まさしく定まる行であり、阿弥陀仏によって正しく定められた行を意味する。具体的には称名念仏であり、それ以外の称名念仏を助ける行を助業と呼ぶ。善導大師による分類は、正行に読誦・観察・礼拝・称名・讃歎供養の五種があるとするものであったが、法然上人はさらにその正行の中に正定業である「称名正行」と、助業である残り四つがあるとされた。
※大本山光明寺さまより発行されている『鎌倉法語集 良忠上人のお言葉』より再掲引用させていただいた内容となります。

