五重相伝の流れ その3

「三重」の相伝

「三重」は浄土宗の第三祖である良忠上人(然阿記主禅師、ねんなきしゅぜんじ)の手になる『領解末代念仏授手印抄(りょうげまつだいねんぶつじゅしゅいんしょう)』(『領解抄(りょうげしょう)』により伝えられます。

良忠上人は現在の島根県に生まれ、天台を中心として学び、福岡県の天福寺にて二祖聖光上人に面謁、『観経疏(かんぎょうしょ)』や『安楽集』、『選択集』など浄土門の書物を読み伝えられ、聖光上人から授与された第二重の伝書『授手印』に対して、その内容を領解したとおりに記した本書『領解抄』を撰述し、聖光上人の印可を得ました。

良忠上人は関東地方に浄土宗の教線を伸ばしたことでも知られ、大本山の鎌倉の光明寺は良忠上人開山になります。
また良忠上人はその浩瀚な著作で知られ、『選択集』『観経疏』などの浄土宗典(浄土宗の教えとって枢要な書物)に対して丁寧な注釈を行い、浄土宗義の体系書である『浄土宗要集(じょうどしゅうようしゅう)』を著しました。これにより二祖三代の相伝を明確にし、浄土宗の鎮西義(二祖聖光上人より受け継がれた教え)を確立しました。
二祖とは高祖善導大師と宗祖法然上人のこと、三代とは元祖法然上人、二祖聖光上人、そして三祖良忠上人を指します。そして今の浄土宗につながる宗義の相伝はこの鎮西義(ちんぜいぎ)であります。
他、京都において元祖法然上人の遺弟(ゆいてい)を尋ね、法然上人の遺文の収集を行ったことでも知られています。

さて、『領解抄』においては、五種正行・正助二行・三心・五念門・四修・三種行儀といった教義について良忠上人の領解(りょうげ)が述べられていますが、大切なことは、これら全てが「南無阿弥陀佛」と領解されていることであり、これこそが三重における「解」の相伝の意味であります。