和尚のひとりごと「地蔵菩薩と地蔵盆

今年もお坊さんにとってもまた一般の皆さまにとっても、何かと慌ただしいお盆が終わりました。酷暑もようやくやわらぎ、8月も半ばを過ぎるこの季節、各地で地蔵盆の縁日が立ちます。
地蔵盆は子どもを守る地蔵菩薩にお参りし子どもたちの無病息災を祈念する行事で、地蔵信仰が広く浸透した関西地方を中心に行われてきました。本来は地蔵菩薩の縁日である旧暦24日に行なわれていましたが、現在は新暦の7月24日もしくは8月24日を中心に前後3日ほどをその期間としているところが多いそうです。
さてこの時にお参りするのは、寺院に祀られたお地蔵さんの他に、路傍や街角にあり日々親しまれているお地蔵さんがその対象となり、道を守護する道祖神信仰とも関係が深いものです。
我が国では、地蔵菩薩は自身は浄土へ行かずに六道輪廻の世界に留まり、そこで悩み苦しんでいる衆生を救ってくれると言われており、また特に子供の守り神として信仰されています。親よりも先に旅立った子どもたちが賽の河原で迷わないように、導いてくれる役割も期待されています。そして私たちがまずイメージする道端の六地蔵は、天界、人間界、修羅界、そして畜生、餓鬼、地獄の六つの迷いの境涯(六道)のすべてに地蔵菩薩の功徳が及ぶとされることに因んでいます。また地蔵菩薩は変幻自在であり、教化する相手に応じて様々なお姿をとるそうです。もしかしたら皆さまもどこかでお会いできているかも知れません。
ところで地蔵菩薩が六道に留まることになったのは、かつて私たちの住む娑婆世界に出生して多くの人々を導き、80歳で入滅された釈迦菩薩より付属を受けたからです。釈迦が入滅されてから、この先5億7600万年後あるいは56億7000万年という遠い未来まで出現しない救世主(弥勒菩薩)に代わり、仏が不在となるこの世界にて人々を救う役割を担っているのです。
さてこの有難い地蔵菩薩は、生まれ故郷のインドでは女神さまの姿をとっていました。大地を守護し、財を蓄え、病を治してくれる女神さまです。このバラモン教で信仰されていた神様は、仏教では大地に眠る鉱脈のように無尽の慈悲を持った菩薩「地蔵菩薩」として生まれ変わり、我が国に伝わったのです。
コロナ禍で何かと大変な時期ですが、皆様も未来を担う子供たちが健やかに育って行けるように地蔵菩薩に手を合わせてみませんか。