和尚のひとりごとNo144「お念佛からはじまる幸せ」

 

 昔の方が「幸せ」の三要素として、「幸せ」に成る為の三つの事柄を挙げておられます。それは「身」「命」「財」の三つです。「身」とは「健康」で、「命」は「長生き」、そして「財」は「お金」です。

 

 幸せはいつも三月花の頃 お前十九でわしゃ二十歳

死なぬ子三人親孝行 使うて減らぬ金百両 死んでも命が有るように

 

 「身」「命」「財」は誰もが願う事ではありますが、全てとなるとなかなか叶わぬ事であります。それでも今の日本はどうでしょうか。有難い事に世界一の長寿国です。住む家も一日中春の陽気な室温に保つ事も出来ます。皮肉な事に寝たきりになったとしても命を延ばす高度な医療技術も御座います。贅沢さえ言わなければ何不自由なく暮らせる国にまで栄えました。しかし人間の欲望は尽きぬものであります。お釈迦様は「人間の欲望というものは、たとえヒマラヤの山を黄金に変えたとしても満たされる事はない」と仰られました。ヒマラヤはインドの北部、チベットに有る世界一高い山です。その世界一高い山を全て黄金に変えたとしても一人の人間の欲望をも満足させる事は出来ないものであると示されました。お金、財産があるが故に身を持ち崩し夫婦別れをする人も居れば、お金が無くても夫婦仲良く幸せに暮らしている人も居ます。人の生き方はお金の多少、有る無しで決まるものではありません。その事は「身」と「命」にも言える事でもあります。結局は持つ人の心次第、受け取って行く側の器一つで毒にも薬にもなるのです。

 

 持つ人の心によりて宝とも 仇(あだ)ともなるは黄金(こがね)なりけり

 

 この御歌は昭憲皇太后、明治天皇の皇后がお詠みになられた御歌です。人生は、目に見える「物」の世界と、目に見えない「心」の世界が一つになって成り立っています。目に見える物資的なものが「物」の世界で、信仰や精神的な支えとなるものが目に見えない「心」の世界です。しかし今の世の中はお金が物言う世界と言われる程、金と物の世の中で人間の「心」が全く失われた社会と言われます。「物」で栄えて「心」で滅びる時代であります。「物」と「心」が程よく調和されてこそ始めて世の中は暮らしよくなるものです。19itigatu

 お念佛を毎日称えたとしてもお金持ちになったり、健康や長生きが保証されるものではありません。しかしお念佛を申して仏様に思いを寄せ、ご先祖様のお陰で今の生活があるのだと思い定めていただければと思います。共々にお念佛の日暮らしをさせていただいて豊かな心を育ませていただき、今年一年幸せ、今日一日幸せと思える日々を過ごして参りましょう。